「Fairy Tales」カテゴリーアーカイブ

Fairy Tales

キルギスの昔話  その1

キルギスの昔話  その1               作成2018年4月

以下の題材は、キルギスの昔話 “ARXI” 2005年刊 によります。この本の内容は主に1960~70年代に学生たちが各地方の住民に聞き取り調査を行い収集したもので収録地が偏っているのは地域を指定したためです。

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昔話その1 

(上記地図の表示地名は昔話の題材地または収録地です)

やがてこう呼ばれるようになった(地名の表記はロシア語)

1.アト・バシ  ат баши      ナリン州   1979年 収録地記載なし

昔昔、ある男が長い旅から帰って来て馬が疲れたから停めた。男はどうしたわけか馬を蹴飛ばしてからそこで休んだ。翌朝、馬が見えなくなっていた。遠くに行ってしまって捕まえられなかった。怒った男は馬を撃ち殺して体を分け頭は山のふもとに置いた。この場所がアト・バシ(馬の頭)と呼ばれるようになった。それから男は肉を別の場所に持って行き食べた。ここはのちにナルン нарын(肉料理)と呼ばれるようになった。

 

2.バトケン Баткен     バトケン州   1979年 収録地記載なし

バトケンは昔から風の場所と言われている。いつも風が吹き、大地は乾き、雨はほとんどない。それで「速い」と「いつも」という言葉、つまり「バト бат」「エケン екен」から「バトケン」と名付けられたという。

 

3.スライマン山   Гара Сулейман       オシュ州  1987年 カラスー町で収録

いつの頃だったかオシュにスライマンと言う長老が住んでいた。メッカから戻った人だった。彼は女性の不妊を治すという噂が流れた。これはフェルガナ盆地でも流れた。そして女性たちはこの長老の元に集まった。彼は山頂付近のなだらかな岩肌に女性を乗せ祈り、この後女性たちは期待通り母親になった。この場所はスライマンの山と呼ばれるようになり彼は聖者とみなされた。この岩肌は多くの悩む女性たちが乗ったので磨かれ、今は滑らかになっている。

 

4.チョルポン・アタ(チョルポンの父)山   Гара  Чолпон-ата    イシククリ州   1972年 チョルポン・アタ村で収録

貧乏な家族に明け方女の子が生まれチョルポンと名付けられた。これは明けの明星、そよ風を意味する名前で素晴らしい子供だった。子供は成長し父親は多額の結納金が欲しいので富豪の妻にしたかった。しかし娘は富豪の所にいるアララという家畜番に恋をした。その時、両親には背けないと思い好きでもない人の妻になるより死ぬ方がいいと考えた。ある夜明けにチョルポンは高い山に登り身を投げた。今までと同じ様子で横たわっている彼女の顔に明けの明星の光が射した。父親は死体となった娘を見つけ、ただ一人の愛する娘に顔と顔をすり合わせ落胆し自失した。皆さん、山になった可愛いチョルポンの姿をよく見て。ロシアの円形帽子に似た高い帽子、まつ毛、眉毛、やや反った鼻、唇、あご、首、胸。そして西側の斜面には青年の顔、ふさふさした髪の小さい顔立ちがある。

 

5.ジャラル・アバート Джалал-абад    ジャララバード州  1975年 アフチャンドル村で収録

昔キルギス人がエニセイ(カザフ北部)から天山の麓に移動し始めた頃のこと。富豪と上流階級たちは良い牧草の放牧地や肥沃な土地が得られた。貧乏人にはわずかな植物しかなくガラガラヘビのいる土地が与えられた。わずかな賃金のアコーディオン弾きにも雇われない貧乏人はそこに留まった。貧乏人のジャラルは多いに悲しんだ。彼の元気で強い馬の名手である二人の息子たちは愚かな金持ちの侮辱的な仕事に出かけていたから。夜、彼は束縛から逃れる方法を寝ずに考えた。他の貧乏人から名案が出された。少し離れた土地を自分の力で耕し自分の物にすることだった。ジャラルはこのことを長老に話して答えを聞かずに去った。荒野と死が同一の場所へ。ジャラルは悔しかった。そして仲間とはいかないことに決めた。彼は息子たちと荒れた土地に入り熱心に耕した。幾多の困難や苦しみに耐え続けた。多くの時間が過ぎ畑で栽培できるようになった。次第に貧乏人たちが集まるようになり富豪たちはそれを邪魔した。ジャラルは困窮した人たちを助けた。このような時間を過ぎ困難にくじけずジャラル・アバートつまりジャラルの居住区(町)が造られた。

 

6.オシュ市  Ош(オシ)     オシュ州     1987年 カラスー町で収録

今オシュ市と呼ばれている所にいつの頃か流通の道が通じていた。そこをキャラバン隊や家畜の群れが通った。家畜番は群れを追い立てるときにオシ、オシと叫んだ。それで町は後にそう呼ばれた。

 

7.ジェティ・オグス  Джети-огуз     イシククリ州  1972年 グリゴリエフ村で収録

昔イシククリに体の大きい欲張りな富豪が住んでいて家畜をジャイロー(高地草原)に持っていた。そこに家畜を移動させたときそれらを数えたら赤い7頭の雄牛が足りなかった。富豪は雇人の若者たちに探すよう厳しく命じた。若者たちは探して人々に聞いたりしたが7頭の雄牛は見つからなかった。ある人々が7頭の雄牛が渓谷に沿って行ったと答えた。若者たちはいくつもの渓谷にやって来て森も探したが足跡はどこにもなかった。とうとう彼らは別方向の川に雄牛の足跡を見つけた。川にやって来て森から見た物は岩になった7頭の赤牛だった。狼が牛を襲ったとき牛たちはお互い並んで狭く押し付け合い頭を前方に傾けた、ちょうどこの岩のように。そして7つの赤岩になってそれからここにいるのだった。岩になって見つかった7頭の赤い雄牛はやがてジェティ・オグス(7頭の雄牛)と呼ばれるようになった。

 

8.40人の娘と40人の若者 Сорок девушек и сорок   жигитов             イシククリ州   1975年 ボコンバエバ村で収録(キルギスの国名、キルギス語でクルグズの謂れについての話です。)

昔、君主がいた時代のこと。君主には唯一の相続人である一人娘がいた。名前をアイクムシと言った。君主には他に子供がいなかったので娘を結婚させないと決め自分のただ一つの喜びとした。娘の世話に40人の娘たちを付け塔に住まわせ警護に40人の若者たちを置いた。君主の娘は気楽に暮らし毎日湖で泳いだ。君主の領地に一人の農民が住んでいた。彼には二人の子供、息子と娘がいた。息子はメン、娘はアナールと言った。ある時妻が死んで男は子供たちが孤児にならないよう再婚した。その妻は最初の日から子供たちを憎んで彼らを遠ざけるために偽りを言った。妻は夫に息子は妹を兄としてではない愛情で好きで彼らは結婚したがっていると告げた。不名誉にならないように主人は密かに子供たちを殺し焼いた。その灰は風が川に吹き飛ばした。ところで40人の娘たちはいつものように湖にやって来て泳いだ。そこであり得ないことを見た。湖の中央に泡が現れそこから若者と娘の声で「私は無実だ。彼も無実だ。」と聞こえた。娘たちは泡を呑み込むと3~4か月後には身重になった。君主は大変驚いて警護の若者たちを疑って彼らを罰した。娘たちは君主にでき事を語り彼に「メンとアナール」と書いてある指輪を見せた。君主は指輪を理解した。そしてとうとうメンとアナールの父親を見つけた。彼は君主に自分の子供たちを殺したことを語った。君主は父親を厳しく罰した。その後君主は40人の世話役の娘たちを解放し40人の若者たちと結婚させた。さらに自分の娘は最愛の人と嫁がせ大規模な宴会をして祝った。40人の娘たち(クルック クズ)からキルギス(クルグズ)の民族が始まった。(注)(クルック クズ→クルグズとなった)

 

9. 不思議な起源 Чудесное Происхождение

イシククリ州  1975年 ボコンバエバ村で収録(キルギス民族の始まりについて上記7と同じ収録地で40人の娘たちが出ている。)

ある村に40人の娘たちが住んでいた。そこに兄と妹が住んでいて村に川が流れていた。ある時そこに泡が現れた。兄と妹が泳いでいる時に泡が口に入った。そのあと妹は妊娠した。村の住民はそのことで兄弟を断罪しその重大な罪により彼らを殺し亡骸を川に捨てた。兄弟の亡骸は「彼は無実だ、私も無実だ」と叫んだ。どの位か時が過ぎて40人の娘たちは川で遊んでいて泡を口にしたら身ごもった。彼女たちからキルギスの民族が始まった。

 

(キルギスの昔話その2 に続く)

 

キルギスの昔話 その2

2018年 7月 日配信

昔話その2

(上記地図の地名は昔話の収録地です)

キルギスの昔話 その2                作成2018年5月

以下の題材は、キルギスの昔話 “ARXI” 2005年刊 によります。この本の内容は主に1960~70年代に学生たちが各地方の住民に聞き取り調査を行い収集したもので収録地が偏っているのは地域を指定したためです。

<やがてこう呼ばれるようになった>(地名の表記はロシア語です。)

1.アチュー・ブラック(邪悪な泉)   Ачуу-блак    イシククリ州  1966年 チョン・ジャルグルチャック村で収録

この村の近く小さな谷に泉がある。それはずっと昔にできた。キルギス人とカルムイク人との戦いがあった時のこと。キルギス人はカルムイク人を山に追い込んだ。そしてカルムイク人の君主チャンガルマカの幼い息子を奪い谷で殺した。君主はその谷に息子を埋めた。何年か後に墓のある場所からきれいで冷たくて美味い水が出てきた。しかしその水を飲むとどんな人も不治の病になった。その後人々はその泉をアチュー・ブラック、すなわち邪悪な泉と呼んだ。キルギス人に息子を殺された君主は復讐をしたのだ。

 

2.カジ・サイ  Каджи-сай  イシククリ州  1976年カジ・サイ村で収録河の近くに教師が住んでいた。彼は賢明で尊敬される人物だった。亡くなった時、住んでいた所に埋葬された。その場所は彼に敬意を表してカジ・サイ、つまり信心深い指導者の土地と呼ばれた。

 

3.チョン・タッシ(大きな石)  Чон-таш    イシククリ州1976年  カジ・サイ村で収録

貧乏な牧夫と彼が愛する富豪の娘がいた。牧夫には結納金などなく彼女を盗むと決めた。彼らは山に向かい彼女は大きな石を持っていた。富豪の召使たちが追いついたが牧夫は彼らを殺して娘を連れて行った。長い道のりの後、別の召使はその谷で休むことにした。牧夫の友人は富豪の手下たちに仕返しをすることにした。牧夫と友人は大きな石を召使たちに投げ、彼らは死んでしまった。その場所は今も石が横たわっていてチョン・タッシと呼ばれている。

 

4. アラミジン川 (Речка Аламедин)   チュイ州1979年 カールマルクス村で収録

ある村にアリヤという美しい娘がいた。彼女の両親は金持ちで娘を自分たちと同じ金持ちと結婚させたかった。しかしアリヤはミジンという牧童が好きだった。金持ちの若者が美人のアリヤのことを聞き求婚するためにやってきた。父親は同意せず結納金を多く要求した。遠方から来た別の求婚者を父親が気に入った。アドリルベックという若者は式の日を決めた。牧童のミジンはそれを聞き富豪の所にやって来た。しかし無慈悲な富豪は彼を殺してしまい井戸に投げ入れるよう命じた。やがて結婚式の日が来た。アリヤは高い山に登り崖から身を投げてしまった。人々は皆泣き、その涙からアラミジン川(アリヤとミジンの川)の流れが生じた。

 

5.カシカ・スー(清涼な水) кашка-суу     チュイ州  1978年チョン・アルク村で収録

ある暑い日、若い放浪者はユルタ(移動テント)の近くで結ばれている馬を見た。ひどい喉の渇きが彼を馬の傍に行かせた。ユルタから若い女性が出て彼に来るよう誘った。ユルタには立派な格好をした賢明そうな老人がいて彼に会釈した。「お若い人、何をお探しかな」老人は聞いた。「よく知られた瑞々しい緑の草がある湖、川、ジャイロー(山の草原)など。私は泉や何らかの川を探しに行くところです。」老人は若者にクムス(馬乳酒)を勧めた。その後「若い人、あんたは人々や家畜を救うべきだ。聞きなさい。あんたはチョン・タッシ山の近くに穴を掘るべきだ。それにはまずここの水を奪って支配している竜に立ち向かって勝たなければならない。ユルタにいる馬と犬を連れて行きなさい。それとこの刀と。」三日三晩、若者ベクジャンは竜と戦いそして打ち勝った。その後、老人に言われた場所に穴を掘り、人々が「カシカ・スー」と呼ぶ清涼な水が川となり流れ出した。

 

<イシククリ湖はこうしてできた>  (表題の表記はロシア語)

イシククリ湖についての話は数多くあり極一部の紹介になります。キルギス語では「ウスク・コル」で「熱い湖」の意味です。

1.アルティナイとメルゲンベック  Алеынай  и  Мергенбек     イシククリ州       1967年 ミハイロフカ村で収録

クンゲイ・アラトー(クンゲイ山脈)にアルティナイという奇麗な娘がいた。一方テルスキー・アラトー(テルスキー山脈)にメルゲンベック、つまり「幸運がある」という名前の猟師がいた。二人はお互いにとても好き合っていた。しかし娘が出かけた際、ある富豪が彼女を誘拐した。そして山の高い場所に建つ塔に監禁した。彼女のメルゲンベックに対する愛情は彼女が崖から身を投げるほど強かった。身を投げた場所にちょうど恋した娘の心のような冬でも夏でも熱い湖ができた。湖は、熱いという意味のイシククリ湖と名付けられた。

 

2.最も明るい星  Самая Яркая Звезда       イシククリ州  1972年 グレゴリエフ村で収録

昔昔の話。ある領主の土地に皆が満月と比べた美しい娘と青年が住んでいた。彼らはお互いに愛し合いそして幸福だった。しかし二人の間に娘を気に入り妻にしたいと願う老人の君主が現れた。君主は仲人を娘の両親の所に送り、両親はそんな金持ちの元へなら、と娘を差し出すことを承諾した。娘は青年に高い山の麓で日没後に会いたいと知らせを送った。さて日が山に沈み空に宵の明星が現れたが恋人は来なかった。娘は自分が彼に必要ないものと考えた。残念にもこの考えは自分の人生が大切なものではないと変わってしまい、ついに彼女は鋭い刃物で心臓を刺した。そこから熱い血が走り出て谷を流れた。流れたその血で熱い湖ができた。さて青年はといえば、会う場所にやってきたが恋人と会えなかった。そして流れている血を見た。青年は月に「夜の美しい月よ、私を奪ってくれ、恋人なしではこの地上で生きてはいけないから。」と話しかけた。それで月は彼を最も明るい星に変えた。それから毎夜、この星は婚約者の娘を思いながらイシククリ湖の波に合わせ瞬いている。

 

3.熱い泉  Гарячие  Ключи            イシククリ州  1972年 アナニエバ村で収録

ある君主の土地に三つの大きな井戸があってそれぞれの秘密は君主しか知らなかった。君主は井戸から水が流れ出ないよう蓋を固く閉めるよう命令して秘密を神聖に守っていた。君主の領地に貧しいが大変美しい娘がいた。そして君主の息子はその娘を好きだったが親は結婚に反対だった。君主は家来に娘の首を息子の目の前で切るように命じ家来はその通りにした。血が落ち地面に流れ、流れる血は沸き始め熱い泉となった。娘の首が落ちた時に井戸の一つが爆発し水がほとばしり君主の土地を水浸しにした。やがてイシククリ湖ができ、今は湖底になった純真な娘の熱い血が流れた場所から熱い泉が噴き出している。

 

4.娘の涙の湖 Озеро  Девичьих  Слез                         イシククリ州  1975年 アナニエバ村で収録

昔昔、イシククリ湖がある場所は荒野で1棟の白い宮殿だけが建っていた。そしてそこには女神が住んでいた。ある日その荒野に羽のある馬に乗って若者が飛んで来た。彼は美しい娘を見て降り立った。娘は彼を一目見て恋してしまった。若者は娘に「もし私といつもいたいなら40日の間、昼も夜も寝ないで私を待ちなさい。」と告げた。39日間、娘は若者の神を昼も夜も待ち続けた。しかし40日目の夜に寝込んでしまった。そしてこの時若者が飛んできて寝ている娘を見た。娘は目覚めたが若者は「君は私を待っていることができなかった」と恋する娘に語った。「私はもうあなたの所に戻ってこない、さらばだ。」と言って飛び去ってしまった。娘の目は熱い涙であふれ昼も夜も娘は泣いた。そして娘の涙から凍らない湖ができたということだ。娘の愛情のように純粋で、そして涙のように塩気がある水。やがて娘は悲しみと涙で枯れて石になり、タスタル・アタという山になったという。

 

5.恐ろしい怪物  Страшное  Чудовтца        イシククリ州  1965年 オイタル村で収録

ある老人が語った。今イシククリ湖のある所に君主が統治していた広大な王国があった。君主は12も扉がある王宮に住んで誰にも会わなかった。ある時王宮に人々が集まった時、君主に会いたいと願った。しかし入口には護衛がいるので入ることはできなかった。それで民衆は君主が姿を見せないので怒り、護衛を殺し君主の所に押し入った。そこで恐ろしい怪物を見た。それはロバの胴を持つ人間だった。これが君主だったのだ。民衆はその頭を切り落として井戸に投げ込んだ。その時、井戸から火が噴き上げ王国を覆ってしまった。それでイシククリ湖ができた。

 

6.太陽の息子  Сын  Солнца             イシククリ州  1963年 ダリシカ村で収録

何世紀も昔のことイシククリがある場所にそれほど大きくない湖があった。周りには町や村が近くに散らばっていた。そこには勤勉な人々が住んでいた。しかし太陽の息子は人々が青銅の製作でトントン叩く音にうんざりしていた。怒った太陽の息子は彼らを破滅させることにした。巨大な岩を持ち上げ湖に投げ込んだ。この恐ろしい一撃で地面が裂け、すべての水は下方の村や大きな町そして山に向かって流れ出た。今はこれらの山や町が湖の透明なきれいな水を通して時々見える。こうしてキルギスの誇りとなるイシククリ湖ができた。

(キルギスの昔話 その3に続く)

キルギスの昔話 その3

2018年 7月 日配信

キルギスの昔話 その3                作成2018年5月

以下の題材は、キルギスの昔話 “ARXI” 2005年刊 によります。この本の内容は主に1960~70年代に学生たちが各地方の住民に聞き取り調査を行い収集したもので収録地が偏っているのは地域を指定したためです。

昔話その3

(上記地図の表示地名は昔話の題材地または収録地です)

<遠い遠い昔に> (題名の表記はロシア語)

1.アイスルー  Ай-сулуу         イシククリ州  1972年グリゴリエフカ村で収録

昔、君主がいた。君主にはアイスルーという名の娘がいて彼女は月のように美しかった。ある時彼女を悪い魔法使いが見て盗みたいと願った。父親は娘を別の君主の妻にするつもりだったのに。アイスルーがかごで運ばれている時、魔法使いは彼女を盗んだ。二人を猟師が追った。魔法使いは空に飛び立ち北極星に聞いた。「私を隠してくれ。追っ手が向こうに行くように。」北極星は答えた。「あんたを隠すことはできない。」それで魔法使いは遠くへ飛んで行った。やがて猟師が急いでやって来て聞いた。「ここで魔法使いが飛んで行かなかったか?」「ああ、飛んで行ったよ」北極星は答えた。それからは娘と魔法使い、そして猟師は北極星の周りを廻っている。   注)北極星、魔法使い、娘、猟師は星座こぐま座の星たちです。

 

2.アルチャ(ヒノキ科の木)  Арча     州、収録地記載なし  1979年収録

ある晴れた日、バイガムバル(預言者 モハマド)は氷河から神聖な水を水差しに注ぎ、そして鳥に言った。「この水を人々に飲ませよ。永遠の命を得るだろう。」鳥はすべてを理解し水を集めて口に入れ飛び立った。長く飛んだため鳥は疲れてアルチャの樹で休んだ。突然、鳥はうっかりくちばしを開け、アルチャに水を全部こぼしてしまった。それでアルチャは永く生きるようになったのだ。

 

3.塔  Башня        チュイ州  1976年 カジ・サイ村で収録

ある時、君主バイトゥクはトクマク(町)を征服することにした。町から遠くないところの谷に娘を従者と置いて君主は部隊と町に向かった。君主は残酷に住民を扱った。容赦なく老人も女性も子供も殺すよう命令した。一人の老婦人だけが残り、君主の元へ来て語った。「あんたは皆を殺した。私の息子も。覚えておくがいい。あんたの愛する一人娘はこの土地で毒蜘蛛に噛まれて死ぬのだ。」

激怒した君主は老婦人を殺し早急に塔を建設するよう命令した。そして塔の一番上の場所に娘を二人の従者と住まわせた。従者は地面から高い所に造られた戸から彼女に食べ物を受け取るためだった。枠だけ馬でその戸まで引っ張り上げることができた。どうにか従者は君主の娘に食べ物をブドウと一緒に渡した。しかし誰もブドウの房に毒蜘蛛が隠れているのに気が付かなかった。娘はブドウに手を伸ばし短い叫びをあげ間もなく死んだ。それから後は誰もいなくなった塔がトクマクの近くに残っている。

ブラナの塔 19年6月
ブラナの塔 19年6月

4.怪力女 グルサナ   Богатырка  Гульсана     バトケン州   カラ・ブラク村で収録 年不明

部族間で仲たがいの争いがあった頃、小さな部族に美人で怪力のグルサナがいた。カイウルマ集落に敵が来てグルサナを差し出せ、さもなければ皆殺しにすると脅した。人々は彼女を好きだったので彼女を秘密の場所に隠した。気高いグルサナは自分で敵から遠ざかった。敵は自分たちの怪力男マイマンと決闘するよう要求した。グルサナが勝たなければ戦争になるが勝てば部族を無傷で開放するという。

人々は彼女が勝つよう神に祈った。マイマンはとても強い対戦相手で何回かグルサナに挑戦していた。一方、彼女は敵が自分を羨んでいてこれは運命だとわかっていた。戦いが始まりいきなり彼女はマイマンを掴み両手で頭の上まで持ち上げ空中で回し地面に叩きつけた。この一撃でマイマンは意識を失った。人々は喜び嬉しさで涙を流した。驚いた敵はこの部族を無傷のまま残した。それでグルサナは人々を守ることができた。言い伝えによるとグルサナが住んでいた場所の小さな部族の子孫が我々カラ・ブラク村の住民だ。

 

5.クリ・ババの怒り Гнев  Луль-баба         イシククリ州  1975年 ボコンバエバ村で収録

いつの頃だったか、美人のチュー川とバトゥル川はお互いに好きだった。風の息子ジェレ・カルは彼らを別れさせようとした。このことはクリ・ババ(イシククリ湖の老人)を大変怒らせた。彼がこのことで怒ると強い風が吹き湖では波が起きる。(注;昔チュー川はイシククリ湖に注いでいたという。)

 

6.花婿の山  Гара  Женичов                イシククリ州  1975年 ボコンバエバ村で収録

ボコンバエバ村から遠くない所に頂上が赤い山がある。老人が言うには昔は青年がそこに行き力試しをした。そこに行く時は結婚する時期だった。もし青年が恋人を自分の手で頂上の赤い所へ運んでいったら結婚の権利を得た。もし運べなかったら次の力試しの時までもっと力をつけなければならなかった。

 

7.大力のダンガット(足つき鍋)    Дангат-Балбан     州は不明  1978年ダン・バラム村で収録

昔昔、カラバイという君主がいた。長く待ち望んで男の子が生まれた。その喜びで皆に贈り物をして盛大な祝宴を開いた。人々はその子を生まれたばかりのダンガット(足つき鍋、宴会の料理に使う鍋)と呼んだ。彼は体の大きい大力の青年に育った。父親は隣の君主の娘を妻に決めた。ダンガットは仲間の青年たちと婚約者を見に出発した。そして手厚く歓待された。その時、花嫁の友だちがダンガットの長靴に血が付いているのを見つけた。花嫁の父は彼を手招きしどうして血が付いているのかと聞いた。ダンガットは「森に入った時、野生の猫の足を見た。その足を踏んだので血が付いたのだ。」と答えた。

それで君主はお供を連れてその場所に行って出来事を確かめた。見つかったのは猫ではなく死んで横たわっている大きなバルス(雪ヒョウ)だった。この謙虚で勇敢な、そして力強いことでダンガットは名声を得た。

(キルギスの昔話その4 に続く)

キルギスの昔話 その4  

2018年 7月 日配信

キルギスの昔話 その4                2018年5月作成

以下の題材は、キルギスの昔話 “ARXI” 2005年刊 によります。この本の内容は主に1960~70年代に学生たちが各地方の住民に聞き取り調査を行い収集したもので収録地が偏っているのは地域を指定したためです。

昔話その4

<イシククリ湖はこうしてできた>  (題名の表記はロシア語)

イシククリ湖についての話は数多くあり極一部の紹介になります。キルギス語では「ウスク・コル」で「熱い湖」の意味です。

1.大地が水に変わった  Зимля  Превратилась  в  воду

イシククリ州   1966年 フルンゼ村で収録

遠い昔の時代、今イシククリ湖がある所にキルギスとは別の部族が住んでいた。キルギス人は彼らと仲良くしていた。その誇り高い部族に一人の美しい女性がいた。両親はその女性を富豪の老人に嫁がせたかった。しかし本人はその婚姻を嫌っていた。彼女は両親に抵抗するつもりではないが怒ってこう言った。「この大地を水に変えなさい、そしてそこで死なせて。風が音を立てる度に私の消えない訴える声を人々に聞かせて。」そしてそれは起こった。大地は水に変わり巨大な湖ができた。風がおきる度に聞き取れないほどの音が聞こえる。それは罪なく不幸にさせられた女性の声だ。

 

2.魔法使いと美女   Колдун  и  Красавица     イシククリ州

1972年 グリゴリエフカ村で収録

昔、ある街があってそこを魔法使いが襲った。魔法使いは街の美人を見て結婚すると決めたのだ。人々は女性が魔法使いから逃れるよう助け、町から逃げさせた。彼女は山に入り魔法使いは見つけられなくて苛立ち周りを破壊した。それから大岩を掴み山から街に投げつけた。その場所にイシククリ湖ができたのだ。

 

3.なぜ湖の水は塩っぱいのか  Почму  в  озере  вода  солёная

イシククリ州 1966年 チョン・ジャルグルチャック村で収録

ある男に二人の息子がいた。二人は成長して兄は金持ちになったが弟は貧乏だった。貧乏で家族に与えるパンもなかった。ある日、猟に出て弟はキジバトを捕えた。キジバトは人間の声で言った。「私を放して。そうしたらお礼をします。」貧乏な弟はお礼の石臼をもらった。金持ちの兄はこれを横取りしようとした。夜、兄は弟のボズイ(移動式テント)に忍び込み石臼を盗んだ。兄が盗んだ臼を遠くに隠すよう小舟に運んだ時、臼が回り出し小舟は塩で一杯になった。もう船から塩がこぼれ出したが兄にはまだ不十分だった。兄は塩をかき集めて湖へ漕ぎだした。やがて塩で一杯になった小船と欲深い兄は沈んでいった。臼は塩を出し続け、それからイシククリ湖の水は塩っぱくなった。

 

4.塩入れ   Солонка            イシククリ州

1968年 ミハイロフカ村で収録

ある善良な人が一人の貧乏な女に料理を作る魔法の塩入れを恵んだ。いつも彼女は家に帰るとすぐ家にたくさんの客を呼んだ。客たちはしばらくご馳走を食べないでいて、どこでこのたくさんの料理を作ったのかと驚いていた。女主人は塩入れを見せた。客の中に金持ちがいてそれは女主人を羨ましがる欲深い男だった。男は塩入れを盗み走り去った。泥棒は小舟に座り塩入れに言った。「塩を出せ!」。塩はたくさん出て小舟一杯になって、もう男がいる場所もないほどだった。それで男は「もう要らない、もう要らない!」と叫んだが男は塩入れを止めさせる方法を知らなかった。塩入れは欲深い金持ちが沈むまでどんどん塩を増やした。このことがあってイシククリ湖は塩っぱくなったのだ。

 

<昔昔に> (題名の表記はロシア語)

1.魚の怪物   Жаян— Рыба          イシククリ州

1972年 グリゴリエフカ村で収録

イシククリ湖にはジャヤン・ルイバ(魚の怪物)がいる。それはとても巨大だ。ただ尾だけで木造船を切断して沈めてしまう。それでここの船は金属製になったのだ。

 

2.なぜカッコウは卵を孵さないか  Почему  Кукушка  не   выси‐

живает яйца      イシククリ州  1975年 ボコンバエ村で収録

いつの頃かキルギスには輝かしい勇士エル・タブルドゥがいた。戦いで彼は足にけがを負いナリンにある魔の山で治療した。その時彼は近くにカッコウを見て頼んだ。「私に翼で食べ物を、くちばしで水を持ってきてくれ。」カッコウは食べ物と水を持って来たが自分の巣を忘れてしまった。それからカッコウは卵を自分で孵さないで他の鳥の巣にこっそり置くようになった。

 

3.賢い男の子   Мудрый  Мальчик       イシククリ州

1972年 グリゴリエフカ村で収録

昔イシククリ湖の沿岸に君主が住んでいた。彼はとても無慈悲だったのでいつも年貢のことで領民を捕えて罰していた。貧乏人はシャコ(ウズラより大型の鳥)やキジ、ウズラを持って来た。ある時、君主は40人のお供、タカと犬を連れ狩りに出かけた。途中で動物の檻に入っている少年に遭った。君主は「お前はここで何をしているのか?」と尋ねた。少年は「僕はキジやウズラを君主と奥様のために捕まえるんだ。」と答えた。「もし何も持ってこられなかったらどうするか?」という問いに「君主の機嫌を損ねるより神の罰があった方が良い。」と答えた。それから君主は領民の年貢を少なくした。

 

4.カリツォフカ村について    О  кольцовке        イシククリ州

1966年 チョン・ジャルグルチャック村で収録

今のカリツォフカ村がある所には、昔まだ人々がいない時代に4本の大木が立っていた。ある時そこに4人の人たちがやって来て木を切るかどうかを話し合った。3人は切ることにしたが4人目は反対した。3人は切り始めた。最初の木を切ったら血が流れ出た。2番目の木からは牛乳が流れ出た。3番目の木を切ったら蛇が飛び出して3人に飛び掛かり3人は死んでしまった。が4人目の人は助かった。この人からカリツォフカの村が始まった。4本目の木は、ほらそこに今立っいる。以前は木曜日になると木の近くから火が燃え出した。しかし今はもう燃えなくなった。

 

5.姉さん   Эжеке   イシククリ州 1975年 ボコンバエバ村で収録

ある富豪の娘が4歳の弟に贈りものとして足の速い雌馬を届けさせた。そして自分は若者と弟の所に出かけた。弟は家に帰って来て姉を呼んだ。「姉さん、馬の乳を搾って!」すると、弟は毎年秋にこの土地に渡って来る小さな灰色の小鳥に変身し鳴いた。「エジェケ ベエサア!」。これは「姉さん、馬の乳を搾って!」という意味だ。

 

6.願掛け母神(ウマイ・エネ)  Ымай-эне         イシククリ州

1975年 ボコンバエバ村で収録

石でできた女性の神、それがウマイ・エネだ。彼女が置かれている場所は神聖な場所だ。そこへ病気や不妊の女性たちがお供えや羊肉を持ち、ウマイ・エネ油を届けお参りする。人々は一心にイシククリ湖の主、白い猫の姿をしているウマイ・エネを拝む。言われているのは湖の主は魚の形になったり子羊の大きさになったりするという。彼女は湖の底へ案内する。私(語り手)はその神聖な場所に行ったことがある。なぜなら頭痛に悩んでいたから。そこに行ったらそれが治まった。一心にどこが治ってほしいか伝え、我に返った時、何も痛みがなくそれから病むことがなくなった。

 

7.ワシ     Орёл      タラス州  タラス地区で 1979年収録

19世紀のこと、貧乏人のエシムという人がいた。彼には敏捷で目が良く強いワシがいた。このワシのおかげでエシムはいつも狩りからたくさんの獲物を持ち帰り村の人たちに食べさせた。この輝かしいワシの話はサマクという富豪も聞いた。富豪は自分にもこのような評判を願いワシを取り上げることにした。富豪はエシムの所に馬の群れを贈り物として持って来た。しかし貧乏人エシムはこの富を断った。それで富豪は仕返しをすることにした。

ある日、エシムが仲間と狩りに出かけた時、富豪は若者たちと家にやってきて娘を誘拐した。途中、敵の富豪と出会ったエシムはワシを放した。彼は富豪を高く持ち上げ地面に投げ下した。若者たちは方々に散ってしまった。エシムは意気揚々と娘、戦利品、仲間とともに歌いながら家に帰った。

 

(キルギスの昔話 終わり)