キルギスの昔話 その3

2018年 7月 日配信

キルギスの昔話 その3                作成2018年5月

以下の題材は、キルギスの昔話 “ARXI” 2005年刊 によります。この本の内容は主に1960~70年代に学生たちが各地方の住民に聞き取り調査を行い収集したもので収録地が偏っているのは地域を指定したためです。

昔話その3

(上記地図の表示地名は昔話の題材地または収録地です)

<遠い遠い昔に> (題名の表記はロシア語)

1.アイスルー  Ай-сулуу         イシククリ州  1972年グリゴリエフカ村で収録

昔、君主がいた。君主にはアイスルーという名の娘がいて彼女は月のように美しかった。ある時彼女を悪い魔法使いが見て盗みたいと願った。父親は娘を別の君主の妻にするつもりだったのに。アイスルーがかごで運ばれている時、魔法使いは彼女を盗んだ。二人を猟師が追った。魔法使いは空に飛び立ち北極星に聞いた。「私を隠してくれ。追っ手が向こうに行くように。」北極星は答えた。「あんたを隠すことはできない。」それで魔法使いは遠くへ飛んで行った。やがて猟師が急いでやって来て聞いた。「ここで魔法使いが飛んで行かなかったか?」「ああ、飛んで行ったよ」北極星は答えた。それからは娘と魔法使い、そして猟師は北極星の周りを廻っている。   注)北極星、魔法使い、娘、猟師は星座こぐま座の星たちです。

 

2.アルチャ(ヒノキ科の木)  Арча     州、収録地記載なし  1979年収録

ある晴れた日、バイガムバル(預言者 モハマド)は氷河から神聖な水を水差しに注ぎ、そして鳥に言った。「この水を人々に飲ませよ。永遠の命を得るだろう。」鳥はすべてを理解し水を集めて口に入れ飛び立った。長く飛んだため鳥は疲れてアルチャの樹で休んだ。突然、鳥はうっかりくちばしを開け、アルチャに水を全部こぼしてしまった。それでアルチャは永く生きるようになったのだ。

 

3.塔  Башня        チュイ州  1976年 カジ・サイ村で収録

ある時、君主バイトゥクはトクマク(町)を征服することにした。町から遠くないところの谷に娘を従者と置いて君主は部隊と町に向かった。君主は残酷に住民を扱った。容赦なく老人も女性も子供も殺すよう命令した。一人の老婦人だけが残り、君主の元へ来て語った。「あんたは皆を殺した。私の息子も。覚えておくがいい。あんたの愛する一人娘はこの土地で毒蜘蛛に噛まれて死ぬのだ。」

激怒した君主は老婦人を殺し早急に塔を建設するよう命令した。そして塔の一番上の場所に娘を二人の従者と住まわせた。従者は地面から高い所に造られた戸から彼女に食べ物を受け取るためだった。枠だけ馬でその戸まで引っ張り上げることができた。どうにか従者は君主の娘に食べ物をブドウと一緒に渡した。しかし誰もブドウの房に毒蜘蛛が隠れているのに気が付かなかった。娘はブドウに手を伸ばし短い叫びをあげ間もなく死んだ。それから後は誰もいなくなった塔がトクマクの近くに残っている。

ブラナの塔 19年6月
ブラナの塔 19年6月

4.怪力女 グルサナ   Богатырка  Гульсана     バトケン州   カラ・ブラク村で収録 年不明

部族間で仲たがいの争いがあった頃、小さな部族に美人で怪力のグルサナがいた。カイウルマ集落に敵が来てグルサナを差し出せ、さもなければ皆殺しにすると脅した。人々は彼女を好きだったので彼女を秘密の場所に隠した。気高いグルサナは自分で敵から遠ざかった。敵は自分たちの怪力男マイマンと決闘するよう要求した。グルサナが勝たなければ戦争になるが勝てば部族を無傷で開放するという。

人々は彼女が勝つよう神に祈った。マイマンはとても強い対戦相手で何回かグルサナに挑戦していた。一方、彼女は敵が自分を羨んでいてこれは運命だとわかっていた。戦いが始まりいきなり彼女はマイマンを掴み両手で頭の上まで持ち上げ空中で回し地面に叩きつけた。この一撃でマイマンは意識を失った。人々は喜び嬉しさで涙を流した。驚いた敵はこの部族を無傷のまま残した。それでグルサナは人々を守ることができた。言い伝えによるとグルサナが住んでいた場所の小さな部族の子孫が我々カラ・ブラク村の住民だ。

 

5.クリ・ババの怒り Гнев  Луль-баба         イシククリ州  1975年 ボコンバエバ村で収録

いつの頃だったか、美人のチュー川とバトゥル川はお互いに好きだった。風の息子ジェレ・カルは彼らを別れさせようとした。このことはクリ・ババ(イシククリ湖の老人)を大変怒らせた。彼がこのことで怒ると強い風が吹き湖では波が起きる。(注;昔チュー川はイシククリ湖に注いでいたという。)

 

6.花婿の山  Гара  Женичов                イシククリ州  1975年 ボコンバエバ村で収録

ボコンバエバ村から遠くない所に頂上が赤い山がある。老人が言うには昔は青年がそこに行き力試しをした。そこに行く時は結婚する時期だった。もし青年が恋人を自分の手で頂上の赤い所へ運んでいったら結婚の権利を得た。もし運べなかったら次の力試しの時までもっと力をつけなければならなかった。

 

7.大力のダンガット(足つき鍋)    Дангат-Балбан     州は不明  1978年ダン・バラム村で収録

昔昔、カラバイという君主がいた。長く待ち望んで男の子が生まれた。その喜びで皆に贈り物をして盛大な祝宴を開いた。人々はその子を生まれたばかりのダンガット(足つき鍋、宴会の料理に使う鍋)と呼んだ。彼は体の大きい大力の青年に育った。父親は隣の君主の娘を妻に決めた。ダンガットは仲間の青年たちと婚約者を見に出発した。そして手厚く歓待された。その時、花嫁の友だちがダンガットの長靴に血が付いているのを見つけた。花嫁の父は彼を手招きしどうして血が付いているのかと聞いた。ダンガットは「森に入った時、野生の猫の足を見た。その足を踏んだので血が付いたのだ。」と答えた。

それで君主はお供を連れてその場所に行って出来事を確かめた。見つかったのは猫ではなく死んで横たわっている大きなバルス(雪ヒョウ)だった。この謙虚で勇敢な、そして力強いことでダンガットは名声を得た。

(キルギスの昔話その4 に続く)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です