伝統芸能を学校で

キルギスの伝統芸能を学校の授業で       2019年11、12月

キルギスの伝統芸能というとマナス叙事詩吟唱やコムズ・オズコムズ演奏が頭に浮かびます。マナス叙事詩はキルギスの英雄マナスの物語でその吟唱は演者が座って身振り手振りを交え謡います。マナス吟唱方法は国内に何十もの流派があるようです。ビシケク市内にマナスやコムズの授業をしている学校があるので行きました。

マナス吟唱授業

ビシケク マナス吟唱授業 19年11月

ここは一般の学校で授業に入れています。左からアサナル先生、ラウル君、アルサマット君、アジベク君、アリアさん。アサナル先生はマナス叙事詩を吟唱するマナスチ(吟唱者)で国内10指に入るほど有名だそうです。

(ビデオ)  マナス叙事詩を吟唱するアジベク君。もう半年練習しています。先生がもういいいと言っても止まらなくなりました。

 マナス (Manas) は、キルギスに伝わる民族叙事詩である。また、その主人公たる勇士の名でもある。口承された数十万行にも及ぶ壮大な民族叙事詩で、ホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』、古代インドの『マハーバーラタ』などよりもはるかに長い。『ギネス世界記録』では世界で最も長い詩と認定され、50万行以上の長さがあると紹介されている。

内容はマナスから始まり、その子セメテイ、孫セイテクと続く計8代の事跡をうたう。口伝としてのマナスの生まれた時代は、7世紀から10世紀に生まれた説や、15世紀から18世紀の出来事を表しているとする説など諸説がある。15世紀初期にマナスについて触れた文献があるが、1885年までその詩は師から弟子への口伝によるのみで書物になることはなかった。

マナス吟唱は「マナスチ」または「マナスチュ」 (Манасчы, Manaschi) と呼ばれる語り手によって語られる。キルギスの有名なマナスチにはサグムバイ・オロズバコフ (Sagimbai Orozbakov)、サヤクバイ・カララエフ (Sayakbai Karalaev)、シャービ・アズィゾフ (Shaabai Azizov)、カバ・アタベコフ (Kaba Atabekov)、セデネ・モルドコーヴァ (Seidene Moldokova)、ジュスプ・ママイ (Yusup Mamai) などがいる。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「マナス」より 一部加筆

在日キルギス共和国大使館 2014年11月28日付け Facebookから  キルギスの叙事詩マナス、セメテイ、セイテクの三部作は2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された。)
ビシケク マナス像横の吟遊詩人像19年6月
(上)ビシケク マナス像横の吟遊詩人像19年6月 右手前はサヤクバイ

マナスチ手前ジュスプママイ 奥サトゥンバイ19年12月

(上)マナス像横のマナスチ銅像  右はジュスプ・ママイ、左はサグムバイ

マナスチ手前ナイマンバイ、奥ツヌベック19年12月

(上)マナスチ銅像 左はナイマンバイ、右はトゥヌベック

マナス像 フィラルモニア19年12月

(上) フィラルモニア前 マナス銅像

若松 寛訳「マナス 少年篇 –キルギス英雄叙事詩-」(東洋文庫694 2001)より

英雄叙事詩「マナス」は勇士マナスの生涯をうたった八部の叙事詩作品であるが、彼の息子セメテイと孫セイテクについての三つの作品を一括した「マナス大系」を「マナス」と呼ぶのが一般的となっている。この八部の叙事詩には長短がある。ジュースフ・ママーイの語り本に拠れば、3万行を超えるものは四部あって、第一部『マナス』(5万行)、第二部『セメテイ』(3.2万行)、第四部『カイニニム』(3.5万行)、第六部『アスルバチャとベクバチャ』(4.5万行)である。第三部『セイテク』は中くらいの篇幅である(2.4万行)。第五部「セイイト』、第七部『ソムビリョク』、第八部『チクテイ』、この三部叙事詩の主人公はいずれも20数歳で世を去り、事跡がわりと少ないため、各部1万行余りあるにすぎない。第八部のチクテイは戦いで死亡、彼に妻がなかったのでマナスの家系はここで絶たれる。 (https://ethnos.exblog.jp/5067482/  より 一部加筆))

追記)マナス叙事詩の和訳は東洋文庫社から第1巻~第4巻まで刊行されています。十年以上前ですが訳者の若松教授にお会いしました。ビシケクで開催されるマナスのシンポジュウムに出席される途中のタシケント空港でした。乗り換えの手続きを聞かれたのがきっかけで少しお話しできました。

追記)マナスという名は市内の施設などに付けられています。ビシケク郊外にある国際空港は「マナス空港」、市内の大通りは「マナス通り」、他に青少年施設は「セイテク会館」などマナスの孫の名前も目にします。またマナス、セイテクという名前の人も多いです。

コムズ授業

コムズは三味線のような三弦楽器です。シュビン音楽学校下級生クラスの授業に行きました。(写真下)左はチョルポン先生、生徒はアイゲリータさん(4年生)。

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コムズ演奏 右からアイゲリータ、サミーラ、アヤナの皆さん

【コムズ комуз 】
「楽器」という名前の楽器。杏か松の木で出来た楽器で、表面も裏面も調弦する部分も木。基本的なつくりは一緒ですが、物によって作家さんによって、入る模様や形が若干違います。弦は3弦で、ナイロンの弦を使っています。
カンバルという猟師がヤギを追っていたところ、ヤギが崖から転落、木に引っ掛かってお腹が破れ、腸が乾燥してからさらさらと良い音をたてたのを聞き、この楽器を作ったと言う伝説があるようです。実際、今世紀になるまでは弦としてヤギの腸を使っていたのだとか。カンバルの名前を取った曲もあります。弾き方としてはカグップ・チェルテュー(3本の弦を一緒に弾く)、テルメ(テルップ・チェルテュー;1本ずつはじく)という基本動作のほか、ばらばらと指を開いて弾いたり、胴を叩いたり、また腕をさまざまに動かすなどアクロバティックな演奏も多く、それは遊牧民だったので持ち運べるものが少ないことから出た遊びの要素だといわれています。

(写真)

コムズ授業(年長クラス)生徒左からメーリム、スイムック、ベグザットの皆さん、右はチョルポン先生

(ビデオ)生徒左からアデミ、メーリム、スイムック、ベグザットの皆さん

【テミル・コムズ темир комуз 】又は【オーズ・コムス ooz komuz】
鉄でできた口琴。テミルは鉄の意味なので、「鉄の楽器」。サイズがほかの国(たとえばサハなど)の口琴に比べると小さく、素朴な印象。金属片を歯の間に固定して口腔内で音を調整します。指と歯で保持し(というのでしょうか)、弁を弾いて音を出す。口腔を利用し倍音を作りだして、共鳴させる楽器です。体が楽器になるというのが面白い。(注)オーズ・コムズは「口のコムズ」という意味です。

基本となる音は口琴ごとに違い、そこから上下少しの音階しか出せませんので、キーが違いすぎる楽器との競演は出来ません。木の口琴もあって、そちらはジガチ・オーズ・コムズといいます。アイヌのムックリのような形をしていて、紐を引いて弾きます。

写真  オズコムズ2 オーズコムズ   オズコムズの演奏  オーズコムズ演奏

【クル・クヤック Кыл кыяк 】
クルミか桃の木から作られる楽器で、2弦。馬の毛を使った弦と弓を使って演奏する、バイオリンの原点のような楽器。
上部はオープンで、下はラクダの皮で作られています。下部を片足の上に乗せたり、両足の間にはさんだりして弾きます。これは楽器が湿気に敏感で調弦が狂いやすいためで、弾くのは大変です。迫力のある音で、コムズとは全然違います。

写真 クヤークの演奏 クヤック演奏

【チョポ・チョール Чопо чоор】
土(チョポ)で出来た笛(チョール)。オカリナみたいなものです。穴は表に3個ずつ2列、後ろと横に1個ずつで8個。明るくのびのいい音がします。

写真  チョポ・チョール チョポ・チョール

【タク・テケ Tak Teke】
楽器ではありませんが、こちらは岩ヤギの人形。全体の関節がバラバラに動くようになっていて、台座につながる糸を引いて操作します。
テミル・コムズやコムズを演奏する際に指に紐をひっかけておいて演奏すると、手の動きに合わせて紐が引かれて動きます。カタカタと動く姿がとてもかわいくて、どこに行っても大人気です。
仕掛けがすぐに分解出来て持ち運べるようになっているのも、遊牧民的工夫です。

写真 人形 タク・テケ  タク・テケ

(楽器いろいろーキルギス民族楽器 より http://kyrgyzkomuz.iinaa.net/sub/music.html )

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